Developmental Care

目次

第1章 発達促進ケア(Developmental care DC)誕生の歴史的背景

第2章 日本ディベロップメンタルケア(DC)研究会 会則

第3章 個別的発達促進ケア(individualized developmental care、DC)の理念

第4章 発達促進ケアの理念(PDF)

第1章 発達促進ケア(Developmental care DC)誕生の歴史的背景

新生児医療の進歩に伴い多くの早産児が生存するようになり、胎児のような新生児が子宮環境外で受ける多くのストレスが、児の発育:発達におよびす影響が配慮されるようになったのは当然であろう。

新生児発達研究のパイオニアであるハーバード大学のブレゼルトン教授の下で、Brezelton新生児行動評価法(Newborn Behavioral Assessment Scale:NBAS、新生児の行動を観察し、その状態・意思を評価する手法)を学んでいたAls博士は、臨床心理士としてNICUで胎児のような未熟児を観察する中で、そのようなストレスが未熟児の神経発達へ及ぼす影響を懸念していた。特に神経細胞のmigrationの途中過程で、子宮外環境のストレスの及ぼす影響は脳の正常なシステム化形成を阻害し、将来的に児の神経学的発達に障害をもたらす可能性を考えた。特に高次脳機能の中枢である前頭前野への影響が、過剰反応や認知能力の低下をもたらし、児の社会性・協調性に問題を引き起こし、それは母子関係形成にも悪影響を及ぼす悪循環に陥ることが考えられた。実際に養育期間に過剰なストレスが加えられた未熟児は、授乳・睡眠の問題や易刺激性(よく泣く)などの臨床的所見が認められていた。
Alsは彼女自身が障害児を持っていた母親の体験から、児を観察することの重要性を認識しており([all behavior has meaning、赤ちゃんのすべての行動は何かの意味を持っている]、既に1972年にBNBASから学んだ知識をIUGRのLBW児に用いた論文を発表している。
Alsはさらに、「全ての生命体は、発生のどの時期においても環境との相互作用の中で発達・分化を続けながら進化してゆく。その過程は適切であれば進み、不適切であれば避けるという二重拮抗作用をしながら環境に調和し、生体としての統合を形作り発育発達してゆく。」という生物学の基本概念を胎児から未熟児・新生児への成熟・成長の応用した独自のsynactive theory発達共作用理論を発表している。さらに1982に、それに基づく未熟児の行動評価法 (Assessment of Premature Infants’ Behavior:APIB) を、さらに新生児個別的発達評価法(neonatal individualized developmental care assessment program: NIDCAP)を開発した。その成果を1994年にアメリカ医学会誌(JAMA)に発表し、これまで見過ごされていた未熟児へのストレスが、神経学発達に長期的な影響を及ぼし、特に高次脳機能障害に起因する認知異常・行動異常を引き起こすことを示した。この論文が、多くの新生児学者に大きなインパクトを与え、これまでのNICUでの医療・看護業務を考え直す切っ掛けとなった。

我国におけるDCの歴史

 我国においても、多くのこれまで救命不能であった未熟児の生存率が高まるにつれ、脳性麻痺や知能障害も無いのに学校などでみんなと一緒にやっていけない子どもが増えてきたことに気づくようになった。その原因は、相手を理解するために不可欠な「心」が育まれていない結果であることが、近年の脳科学の進歩によって明らかにされてきた。この重要な事実について、未熟児医療の現場の観察から、過剰な不適切なストレスがその背景にあることを示したのがAls博士らの仕事に大きな関心が寄せられたのは当然であった。
人間の人間たる由縁は高次脳機能により相手の気持ちを感じ取る能力であり、「心の理論」と呼ばれている。私たちは医療者として、子供達の命を救うことや身体的障害を少なくする医療に一応の成功を収めながらも、子どもの心を救う医療においては無知であったことを深く反省しており、それが現在のDC研究会との関わりの大きな誘引となった。
わが国においても山内逸郎等の新生児医療の先達は、「non-invasive care」や「loving tender care」を新生児医療の原則に加えて、その重要性を教えていたごとく、その基本的な概念に異議を持つ者は少ない。最初のNIDCAPの学術的な発表から既に30年ほどの年月がたち、北米や北欧を中心にトレーニングプログラムや施設の認定システムが確立されているが、ようやくわが国でも日本語でNIDCAPを学ぶ環境が整いつつある。以下に我国の個別的発達促進ケアの歴史的足跡を示す

  • 2001年:仁志田博司:個別的発達促進ケア(T・U)−−NICUケアの新しい風:  助産婦雑誌、55(6・7):67−71・68−73

*2001年:堀内 勁:新生ケアのあり方とデイベロプメンタルケア、周産期医学 31(1):95−100.
*2005年:山川 孔(約):未熟児をはぐくむデイベロプメンタルケア(Edward Goldson:編、Nurturing the premature infant: Developmental intervention in the neonatal intensive care nursery、1999,Oxford University Press,England), 医学書院                                  
*2007年:第43回日本周産期:新生児学会(会長:仁志田博司)でAls博士が招待講演。
*2010年2月:第1回ディベロプメンタルケア セミナー(聖路加看護大学)
       第1回NIDCAP認定コース・(墨東病院NICU)・講師:gretchen Lawhon)
    8月:第2回ディベロプメンタルケア セミナー(日本赤十字看護大学)

*S2010年12月:第3回ディベロプメンタルケア セミナー(大阪医療福祉専門学校)

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第2章 日本ディベロップメンタルケア(DC)研究会 会則

第1章 総則

(名称)
第1条 本会は、日本ディベロップメンタルケア(Developmental Care; DC)研究会と称する。

(事務局)
第2条 本会の事務局は、〒433-8558 静岡県浜松市北区三方原町3453 聖隷クリストファー大学 大城昌平 研究室内に置く。

(目的)
第3条 本会は、我が国にディベロップメンタルケア(DC)の理念と実践を導入し、専門職者のDC教育プログラムを開発して、専門職者の資質向上を図り、新生児および早産児ケアの質を改善し、保障することを目的とする。

(事業)
第4条 本会は、前条の目的達成のために次の事業を行う。
(1)DCに関する講演会、講習会の開催
(2)DCに関する調査および研究開発
(3)その他本会の目的達成に必要な諸事業


第2章 会員

(会員)
第5条 会員は、本会の目的に賛同した個人とする。


第3章 本会の運営

(総会)
第7条 本会の運営は、総会の決議で実行される。

第8条 総会は、年1回以上開催し、本会の運営に関する重要事項を議決する。
(二) 総会は、出席した会員をもって成立する。議事は、出席者の過半数をもって決議される。

(役割)
第9条 本会は、会長、事務局長、会計・庶務、およびワーキンググループを設ける。
会長 1名
事務局長 1名
会計・庶務 1名

(ワーキンググループ)
第10条 ワーキンググループは、主な会員により組織し、本会の活動を推進するための事業を企画・運営する。

 

第4章 会計

(経費・会計年度)
第11条 本会の経費は、セミナー参加費・寄付金及びその他の収入をもって充てる。
本会の会計年度は、毎年4月1日より始まり、翌年3月31日に終わる。


第5章 会則の変更

(会則の変更)
第12条 この会則の変更は、総会の議を経て、承認を得る。


第6章 雑則

(会則に定めていない事項)
第13条 この会則に定める事項のほかに、必要な事項は総会の議を経て別に定める。


付則
この会則は、2009年11月15日から施行する。

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第3章 個別的発達促進ケア(individualized developmental care、DC)の理念

演者は長い間母と子の周産期新生児医療に携わってきたが、多くの重症新生児、特にこれまで救命不能であった未熟児の生存率が高まったにもかかわらず、脳性麻痺や知能障害も無いのに、学校などでみんなと一緒にやっていけない子どもが増えてきたことに気づくようになった。その原因は、相手を理解するために不可欠な「心」が育まれていない結果であることが、近年の脳科学の進歩によって明らかにされてきた。
この大切な事実について、未熟児医療の現場の観察から、過剰な不適切なストレスがその背景にあることを示したのがAls博士らであり、その提唱する「発達における共作用理論(synactive theory of development)」に基づく「新生児個別的発達促進ケア(Newborn Individualized Developmental Care and Assessment Program、NIDCAP)である。これらはBrezeltonの弟子である臨床心理士としてのAls博士の優れた児の観察により構築されたものであり、ある意味ではBrezelton Newborn Behavioral Assessment Scaleの流れを汲むものともいえよう。
最初の学術的な発表から既に30年ほどの年月がたち、NIDCAP Federation International (NFI)を中心に、トレーニングプログラムや施設の認定システムが確立されている。わが国においても山内逸郎等の新生児医療の先達は、「non-invasive care」や「loving tender care」を新生児医療の原則に加えて、その重要性を教えていたごとく、その基本的な概念に異議を持つ者は少ない。
人間の人間たる由縁である「心の理論」に興味を持っていた演者は、DCによるストレスの少ない未熟児医療が前頭前野の認知と共感といった高次脳機能に影響を及ぼす結果を示唆した、1994年のAls博士等のJAMAの論文に、大きな衝撃を受けたことを昨日のように思い出す。 私は医療者として、子供達の命を救うことや身体的障害を少なくする医療に一応の成功を収めながらも、子どもの心を救う医療においては無知であったことを深く反省しており、それが現在のDC研究会との関わりの大きな誘引であった。

現在熱心に取り組んでいる仲間と共に、NIDCAPを学ぶ中で必ずや我国も小さな子供たちに還元出来る宝を掘り当てることを夢見て、日本DC研究会が発足した経緯に触れると共に、第6回ディベロップメンタルケアセミナーのイントロとして、NIDCAPの背景となっている人間の心の発達を語ってみたい。

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第4章 発達促進ケアの理念(PDF)